2021年に僕がアジャイルコーチとして気をつけたい6つのコト
- 1. 「It depends(時と場合によるね)」とお茶を濁さない
- 2. 「ウォーターフォール」脳を捨てる
- 3.「コーチング」だけで乗り切ろうとしない
- 4. 「チェンジ・エージェント」気取りをやめる
- 5. なるべく「コード」を読む
- 6. とにかく「ポジティブ」に居続ける
- おわりに
今回は、今年をふりかえりつつ、「2021年に僕がアジャイルコーチとして気をつけたい6つのコト」を挙げたいと思います。
1. 「It depends(時と場合によるね)」とお茶を濁さない
経験を重ねるほど、企業形態やチームの成熟度やプロダクトの性質など、アジャイルチームが置かれた状況は多種多様であるため、一つの課題に対する万能な解決策がないこと(「銀の弾などない」)をしみじみと実感するようになる。
そのため、クライアントや知人からアジャイルに関する相談される時に「It depends」と言っていた時があった。
「It depends」......何だかカッコいいし、何だか深いことを言っていそうだ。
しかし、そこに問題を解決しようという能動的なパッションはない。
来年は「It depends」とお茶を濁さず、「銀の弾などない」と知りつつ、状況を見極め、状況に応じた最適解を、現場と一緒に考えてもがき続けたい。
2. 「ウォーターフォール」脳を捨てる
よく、アジャイルはプラクティスではなくマインドセットだと言われるが、果たしてアジャイルコーチは完璧にアジャイルなマインドセットが身についているのだろうか?
......答えは、ワークショップの運営で見極められます。
かつて僕はワークショップのタイムスケジュールを5分単位で考えてきて、途中でトラブルや計算違いがあっても、最初のスケジュールを必死に守り通そうとしていた。
一方、先輩コーチ陣は最初に計画したタイムスケジュールを臨機応変に変えており、そもそもタイムスケジュールすら無い方もいた。
来年からは、ワークショップに限らず、全てのシーンにおいて、最初の計画を経験から臨機応変に変更できるように心がけたい。
3.「コーチング」だけで乗り切ろうとしない
「答えは相手の中にある」「対話を重ねて一緒に答えを模索する」といったコーチングの姿勢はとてもかっこいいし、有効に思える。
かくいう僕も、一方的に教えるだけのティーチングよりコーチングの方がずっと魅力的に思え、今年は数ヶ月に渡るセミナーも受講した。
そして、新規クライアントに対して「答えは相手の中にある」という姿勢で臨んだ。
......結果は、もちろんボロボロになった。
そもそも、多くの場合、クライアントに従来の開発手法とは異なる思想、価値観、そしてプラクティスを身につけてもらうのがアジャイルコーチに与えられるミッションである。
そんな中、はじめから「答えはあなたの中にある」とコーチング的に問いかけても、従来の価値観に基づく返答がなされ、訂正と軌道修正に追われるだけである。
というわけで最初はティーチングからはじめ、慣れてきたらコーチング的なアプローチを取るのが良いと今は考えている。
(そもそもティーチングとコーチングに優劣はなく、両者とも重要なツールだ)
4. 「チェンジ・エージェント」気取りをやめる
今年はアジャイルコーチにとってクライアント(依頼主)との期待値調整こそ重要なことはないと感じた一年だった。
けれども、クライアントの期待値が曖昧だったり、また、クライアントの意図が現場に伝わっておらずケースも多く、何から支援して良いかわからないケースも多い。
......組織の課題は明白だ。
......有効な手段も分かっている。
そうした中、業を煮やした僕は、つい、クライアントの期待値を明確化する前に「こうしましょう」とチェンジ・エージェント(=組織における変革の仕掛け人)になろうとしたことがあった。
しかし、部外者がチェンジ・エージェントになろうとした代償は大きい。
結果的に「この人が代わりに考えてくれる」とコーチに依存するマインドセットが生まれ、クライアントの協力は得られず、状況が悪化しただけだった。
来年は僕一人で出しゃばらず、クライアントの期待を明確にすることから、支援を始めたい。
5. なるべく「コード」を読む
アジャイル導入においてはプロセスと同じように技術が重要である。
どんなにチームの雰囲気が良くとも、スクラムプロセスが完璧に実施できていても、肝心の設計やコード品質が悪かったり、CI/CD環境が無かったり、十分なテストコードが用意されていないことには砂上の楼閣に等しい。
そうしたチームは、数週間後か数ヶ月後か、スパゲッティコードとの壮絶な闘いに追われ、定期的なリリースどころではなくなってしまう。
そして、上記の問題を検出するには、メンバーからのヒアリングや観察だけでは不十分で、実際にコードを読んでみるしかない。
現場によって言語が異なるため一筋縄ではいかないが、来年はきちんとコードを読むということも意識したい。
6. とにかく「ポジティブ」に居続ける
大企業や従来型企業を支援すると、クライアントから我が社の「深い闇」を打ち明けられることがある。
深い闇が経営層のこともあれば、マネージメントのこともあり、組織体制のこともあり、ビジネスモデルのこともある。大袈裟に言えば、エンタープライズアジャイルとは、そうした「深い闇」との闘いなのだ。
そうした中、クライアントと付き合いが長くなればなるほど、こちらまで相手に共鳴してしまい、「深い闇」が本当の深い闇に、動かしがたい障害に思えることがある。
とはいえ、その闇に飲み込まれ、「ミイラとりがミイラになって」はいけない。
来年は相手に共感しつつも、とにかく一人でポジティブに居続け、相手と一緒に深い闇から脱出する方法を探し続けたい。
そもそも深い闇は見方を変えれば「高い壁」であり、「高ければ高い壁の方が 登った時気持ちいいもんな(Mr.Children)」なのである。