アジャイルコーチの備忘録

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atama plusの大規模スクラム(LeSS)リモートイベント見学レポート【後編】

前回、atama plusの大規模スクラム(LeSS)イベントについて客観的に書きましたが、後編では個人的な感想やご提案をお伝えします。

norihiko-saito-1219.hatenablog.com

ステキ❤️と思ったこと

  • チーム間の積極的な助け合い
  • UXリサーチ結果やユーザーフィードバックの積極的な共有
  • メンバーの課題形成/解決能力の高さ

チーム間の積極的な助け合い

チーム数が多い組織では、チームメンバーの意識がチーム内に閉じ、チーム間の情報共有や連携が薄れる傾向(いわゆる「サイロ化」)がよく見られますが、atama plusでは積極的にチーム間で助け合っていました。

スプリントプランニングでは、大変なプロダクトバックログを担当することになったチームに、「本人達のチームは大丈夫なのか!?」とこちらが心配になる位、他チームのメンバーが積極的にトラベラー*1として他のチームに協力する様子が印象に残りました。

これは、UXリサーチやユーザーフィードバックの共有等の一つ一つの工夫により、メンバーの意識をチームだけではなく絶えず「ユーザーやプロダクト全体」に向かわせている努力の賜物だと感じます。

UXリサーチ結果やユーザーフィードバックの積極的な共有

今回、スクラムイベントだけではなく、atama+のユーザーの一人である塾の運営者へのインタビュー結果を共有するワークショップ(教室長ワークショップ)に参加することができました。
印象的だったのは、単なる共有にとどまらず、「新たに学んだことは何か?」「認識を深められた点は何か?」とチーム全員でインタビュー結果を基にディスカッションしていた事
このように、UXリサーチ結果やユーザーフィードバックを組織全体に対し深いレベルで共有している現場はまだまだ少ないのではと感じました。

メンバーの関心/課題解決能力の高さ

スクラム運営や課題解決をスクラムマスター任せにするチームは多いですが、atama plusでは多くのメンバーがスクラム運営にも関心が高く、イベント中にも「リファインメントに時間が掛かりすぎる」「イベント進行の効率化」等の課題を指摘していました。
事実、見学中にアジャイルコーチとして密かに感じていた課題の大半が、メンバーによってその場で指摘され、他のメンバーから的確な解決策が提示されていました。

(もし)atama plusのスクラムマスターだったらplusしたいこと

最後に、ほんっんとおおおおおに、余計なお世話ですが、もし僕がatama plusのスクラムマスターだったらplusしたいことを書いてレポートを終わりにしたいと思います。

僕がatama plusにplusしたいことは「キャンプファイヤー」(ゆるさ、余裕、遊び)です!

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今まで書いてきた通り、atama plusでは経営、ビジネス部門、開発部門が一丸となって大規模スクラムを真摯に実践し、プロダクトの成長とユーザーに向き合っていました。メンバー1人1人の課題解決能力も極めて高めです。

......ですので、あまり言う事ないのですが強いて気になった点を挙げれば、論理的判断や効率性を優先するあまり、合意形成が浅いままミーティングを終えたと感じられたケースが何度かあったことです(e.g. 時間切れになったオーバーオールレトロスペクティブ。自分たちが話したいことよりも時間の都合から「主催者の意図に沿った意見をまとめる」傾向が見られた教室長ワークショップ等)。

atama plusでは(たぶん)やるべきことや課題が山積しており、またスクラムのタイムボックスの観点からも会議や仕事の効率化の追求は非常に重要です。一方、個人的には経営、ビジネス部門、エンジニア、UXデザイナー、QAに至る多種多様なメンバーが協業する際、些細な認識のズレの積み重ねが、大きな問題に繋がることを経験してきました。

そこで、たまには時間をたっぷり取って、個人個人の深い所に繋がるような交流の機会を作ることが、結果的により強靭な組織に繋がるのではというのが僕の意見です*2

色々書きましたが、そういった理由で、キャンプファイヤーをオススメしました!
いつか、焚き火を囲んで皆さんとゆっくりお話しする機会があれば嬉しいです!

おわりに

今回は前後編でatama plusの大規模スクラム見学レポートを書きました。

アジャイルコーチとして普段支援している大企業の対極にあるatama plusのようなスタートアップをじっくり見学できたのは、貴重な体験であり、本当にありがたい機会でした。
スタートアップというと華やかな印象があるかもしれませんが、僕が見たatama plusのメンバーは「大規模スクラム(LeSS)の学習」「アジェンダの準備」「一つ一つ課題に向き合い丁寧に解決する姿勢」等の地道な事を積み重ねており、その姿勢はエンタープライズアジャイルを目指す僕達も学ぶべき事が多いと感じています。

またスクラムマスターの河口さんによるとatama plusでは、創業当時より、プロダクトディスカバリーとプロダクトデリバリーを組み合わせた「デュアルトラックアジャイル」へ取り組んでおり、今回導入した「LeSS」との組み合わせた新しい開発手法を模索しているとのことです。

note.com

atama plusでは見学も調整できるということなので、大規模スクラムに興味がある方は、是非 kawakin さんにご相談してみてください!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

*1:トラベラーについては、こちらを参照。 less.works

*2:もちろん、こんなこと僕に言われるまでもなく、もう既にいろいろやっていると思いますが!!