派遣/フリーランス中心でも良い感じにチームビルディングする方法
はじめに、アジャイルにおけるチームビルディングの重要性
マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した「組織の成功循環モデル」という考え方があります。上手くいっている組織は最初にメンバーの信頼関係や相互理解などのメンバーの「関係の質」を高め、結果グッドサイクルが発生し「結果の質」向上に結びつく。という理論です。
また、ジェームス・コプリエンによる『組織パターン』では、全てのパターン言語の起点に「信頼で結ばれた共同体」パターンがあるとし、どんなテクニックを適用しようとしても、最初に信頼関係を構築しなかったら無意味だということが示唆されています。
ですので、もしアジャイルを組織に導入する際にまず何をすべきか? と聞かれたら、私は「チームビルディング」と答えます。一見遠回りに思えるかもしれませんが、チームの相互認識や信頼関係を向上させないままスプリントを開始することは、基礎工事をしないまま高層ビルを建設するようなものです。
そしてチームビルディングが圧倒的にうまく行くのは自社メンバーだけで構成されたチームです。
他社/フリーランス中心チームのチームビルディング
しかし、実際は、経営戦略やエンジニア不足から、自社だけでエンジニアをまかなえず他社またはフリーランスメンバー中心の開発チームになることが多いですし、今後はさらにこのような形態のチームが国籍含め増えていくでしょう。
そして、このような場合、チームが成立するまでに到らず、いわゆる寄せ集めのまま終わってしまうケースが多いのも現実です。
なぜならチームとは「共通の目的のために集まった人物の集合(Wikipediaより)」。にも関わらず、自社メンバーの目的は「自社プロダクトの成功」に対し、自社以外のメンバーの目的は「より高い単価や増員」などと両者の目的が根本的に異なるからです。加えて、チーム内に顧客-受託企業などの階層構造が持ち込まれることも、一致団結することをさらに困難にします。
もちろん、両者の立場による目的のズレを完全に埋めることはできません。
しかし、このようなケースでも目的のズレを調整し寄せ集めからチームになることは決して不可能ではありません。
今回は私がこれまで実施してきた方法と一言解説をお伝えします。
目的の共有
- インセプションデッキ
スキル/価値観/プライベートの共有、「お互いを知る機会」作り
- スキルマップ
- ドラッカー風エクササイズ
- wevox values card
- 雑談
- チームランチ、飲みニケーション
プロダクトの価値やビジョン、POの情熱の共有
- プロダクトへの価値、情熱を共有する
- ユーザー/利用シーンに参加してもらう
組織が支援できること
- 一括請負型契約ではなく準委任型契約にする
- できるだけ会社の教育/福利厚生に参加できるようにする
- チームビルディングに投資する
解説
目的の共有
繰り返しになりますが、チームとは「共通の目的のために集まった人物の集合」です。なのでチームになるためには目的を統一させるのが先決です。そのためにはインセプションデッキなどで、プロジェクトのゴールや目的をしっかりと把握する必要があります。
スキル/価値観/プライベートの共有、「お互いを知る機会」作り
チームの目的を把握したら、次はお互いを知ることが重要です。
複数の立場が混ざったチームビルディングのポイントは、できるだけ立場や役割を超えた一人の人間としてお互いに接すること。スキルだけをシェアするよりも、ドラッカー風エクササイズなどでお互いの期待や価値観をシェアすることをオススメします。また、そのために業務とは関係ない雑談を積極的に取り入れてきました。
プロダクトの価値やビジョン、POの情熱の共有
いくらチームの目的がはっきりし、お互いを知ったところで、肝心のプロダクトビジョンがショボかったら元も子もありません。POは是非プロダクトの価値やビジョンを情熱を持って正面からメンバーに伝えてください。もしも情熱がなくてもあるフリをするのがPOの重要な仕事です。
また、経験上ユーザーインタビューや利用シーンを見学してもらうこともとても効果的でした。実際にプロダクトを求め、利用するユーザーの声を聞くことは、エンジニアにとって大きな励みになります。
組織が支援できること
チームはチームビルディングを頑張っていても、組織はそれに無関心または冷ややかに見つめている現場をよく見かけます。しかし、チームビルディングは組織の支援なしには不可能といっても過言ではありません。たとえば契約。一括請負契約で受託企業にリスクを押しつければ、どんなにチームビルディングを頑張っても次第次第にメンバーが契約によって身動き取れなくなる現場を見てきました。また、困難かもしれませんが、トレーニングやランチなどの福利厚生を自社以外のメンバーに適用することも是非ご検討ください。チームビルディングはアジャイルの要ですが、効果が得られるまで忍耐が必要な投資だと認識してください。