「あー、それわかる〜!」は共感か? NVCにおける「他者共感」を考える
はじめに
NVC(非暴力コミュニケーション)における他者共感について語る前に、私がNVCに触れる以前に私が「他者に共感する」際にやっていたことを言語化してみよう。
一言でいえば、私は、自分の経験や心理学的知識を動員させ、相手の感情にマッチング(当たりそう)しそうな感情を探していた。
相手の感情が見つかったら、「わかる〜!」といって自らの経験を語りだした。
簡単な例をあげよう、
- 妻「上司の話が長くて、しかも話があっちこっちに飛ぶから、何を言っているかわからない」
- 私「わかる〜! 辛いよね。自分の上司もさ......(自分の上司について語り出す)」
さて、上記は何が間違っていたかがわかるかい?
素晴らしい。すべて間違っている
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』よりルーク・スカイウォーカーの台詞
ーーNVC的観点からいえば上の短い会話の中で3つも間違っている。
- 相手よりも自分にフォーカスしていた
- 相手の感情が「わかる」と思い込んでいた
- 相手の感情を「当てよう」としていた
※NVCを知る以前の他者共感のイメージ
NVCにおける他者共感とは?
さて、NVCにおける他者共感とは、「相手の感情を"推測"することである」。
ちょっとまって、最初の例と同じじゃないか、と思ったかもしれません。
けれど、字面は一緒だけど大きくちがうのです。
前項に挙げた3つの誤りと対比させて、NVCにおける共感の特徴をあげます。
- 相手にフォーカスする
- 相手の感情は「わからない」ことを認める
- 相手の感情を「当てない」
相手にフォーカスする
前項で私が共感している際に「自分の経験や心理学的知識を動員させて」と書きましたが、その瞬間、相手へのフォーカスが外れていることに以前の私は気づいていません。
ワークショップではその状況を「懐中電灯を相手から自分に向ける」と表現されていました。もしあなたが相手に共感したい際は、相手に対して懐中電灯を向けつづけること、「わかる〜!」と言って無自覚に自分に懐中電灯を向けてしまうことに注意する必要があります。
個人的には、他者に共感する上で自分の類似経験を探すことや心理学の知識で分析することよりも「相手に懐中電灯を当てつづけること」がはるかに役にたったと実感します。
相手の感情は「わからない」ことを認める
NVCを習う中で、相手を共感する際に「その人のことは、その人にしかわからない」「相手の感情は「わからない」」「相手には相手の世界があることを尊重する」ことが繰り返し強調されました。
「その人のことは、その人にしかわからない」......当たり前のように聞こえるかもしれませんが、当時の私にとっては共感のイメージを大きく覆すほどショッキングな一言でした。