アジャイルコーチの備忘録

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『組織パターン』第1部を代わりに読む(パターンは疎結合、スクラムは密結合)

ずっと積読していた『組織パターン』を読み始めた。
難解でもあるが、なんて楽しくエキサイティングな本だろう。

エキサイティングなのは本書のテーマが私の関心領域である組織変革ということだけではありません。本書ではパターン言語やソフトウェアアーキテクチャ文化人類学社会学といったさまざまな事柄が高度に統合されており、様々なインスピレーションを与えてくれるからです。

今回も敬愛する友田とん氏の『『百年の孤独』を代わりに読む』にならって、本書をちびちびまとめながら、読みながら思い浮かんだインスピレーションを書いていこう。ですので、正確なまとめを期待する読者のみなさまには先に謝ります。今日は「第一部 歴史と導入」から、パターン言語やスクラムについて思うところを書いていきます。

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パターンとライブラリ、パターン言語とフレームワークの共通点と相違点

本書を読んで、私はパターンをプログラミング言語におけるライブラリと、パターン言語をフレームワークとそれぞれ対比させて理解しました(比較対象として適切かどうかわかりません......!)。

まずは本書で示される「パターンについての短い、それゆえ必然的に不完全な定義」を引用します。

繰り返し発生する構造的な形で、あるコンテキストにおける問題を解決するもの。なんらかの全体の全体性あるいはシステムに寄与し、美的あるいは文化的な価値を反映する

共通点

独立した問題に対する解決策という意味でパターンとライブラリは近く、複数の解決策を組み合わせることでひとつの構造を作るという意味でパターン言語とフレームワークは近い。

相違点

ただし、多くのライブラリがコンテキストに依存しない汎用的な解決策を指向するのに対し、パターンはある特定のコンテキスト下で発生する問題に対する解決策であるという点が異なる。
また、フレームワークが組み合わせる解決策が強く規定されていのに対し、パターン言語は組み合わせる解決策について、示唆はされるものの基本的に利用者にゆだねられている点で異なっている。
また、フレームワーク中の解決策同士の依存性は高く、ひとつの解決策を除去するとフレームワークとして成りたたなくなるが、パターン言語内の各パターンは独立し相互依存性が低いのも異なっている点である。

上記した"コンテキスト依存"であることがフレームワークとパターン言語を大きく分かつと著者は感じる。フレームワークがもたらす構造は静的であることに対し、パターン言語がもたらす構造は動的である。複数のパターンの組み合わせ方はコンテキストに依存するが、パターンを適用したり追加すると、そのコンテキスト自体が変化するからだ。

パターンは疎結合スクラムは密結合

前項で「パターン言語内の各パターンは独立し相互依存性が低い」と書いたが、本書に以下の言葉がある。

適用に際して、パターンは疎結合なのだ

これを読んで、私はまっさきに「パターンは疎結合スクラムは密結合」という言葉が浮かんだ。私の観測範囲では最近スクラムに対する批判が多いが、上記が批判のひとつの根拠になっていると感じる。つまり、スクラムのイベント、ロール、成果物といった構成要素が密結合すぎて、現実に変化していくコンテキストににうまく対応できないという問題である。(もしかしたら上記問題を解決するためにスクラムをパターン言語に再構築する試みが「スクラムパターン」であり、その集積が『A Scrum Book』かもしれませんが、著者はそこまでわかっていません)

疑問

本書でパターン言語は「パターンを組み合わせるための構造」と定義されますが、その際いくつかの疑問が浮かんできます。
ただし、これは本書を読んでいく中で解消されると想定されますので、期待を持って読んで行こうと思います!

  • あらかじめ何らかの構造が想定されているのか? それともパターンを組み合わせることで構造が生じるのか?
  • あらかじめ何らかの構造が想定されていない場合、パターンを組み合わせる際はどのような指針で組み合わせればよいのか?
  • パターンがもたらしたコンテキストの不具合やフォースを解決するために別のパターンを適用していったら「ツギハギ」の構造になってしまわないか?

まとめ

というわけで、今日は「第一部 歴史と導入」についてライブラリやフレームワークと対比させながらパターン言語をまとめ、スクラムについても言及しました。
他にもいろいろ書きたいと思うことは多いのですが、残念ですが時間切れです。
今後もちょくちょく『組織パターン』についてこんな感じでまとめて行きたいと思いますので、ご興味ある方、楽しみにお待ちください!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!