経験と理論、どちらから先に伝えるべきか?
たまたま今日は『リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法』を読んでいたが、紹介されるエピソードや書籍や研究や一々面白くて引き込まれる。
たとえば、ロッククライミングの講師の話、
インストラクターが現われ、全員が正しく安全装置を着用しているか確認しました。全員の準備が整いチェックが済むと、インストラクターは皆の前に立ちました。我々は黙り込み、講義が始まるのを待ちかまえていました。
ところが講義が始まりません。代わりにインストラクターは我々は登り始めるに言ったのです。ただそれだけです。30分間。そうしたら皆ここに戻って来るように、と。
(中略)
30分後、インストラクターが戻ってきて、なんとそれから講義を始め、登り方を説明したのです。その時には、(短い時間とはいえ)いくらか経験を積んでいましたから、その説明に非常に納得がいきました。
先日行われたScrum Fest Osaka 2021の自分も参加させていただいたセッションで、「経験と理論、どちらから伝えるべきか?」という質問が出たけれど、一般的には経験の方が良いようだ。
先輩から教えて頂き、たまに読み返している『研修デザインハンドブック』でも、先に理論を教えるよりも、先に経験(Experience)させ、そこで気づき(Aware)を得て、その後、知識や理論(Theory)を学んでもらう「EATモデル」の方が、効果的な学びに繋がると書かれている。
さて、アジャイルコーチングの現場でも、最近は意図的に先に知識を伝えるのではなく、「あえて失敗させて痛い目にあってもらってから、理論を伝える」機会が段々と増えてきた。
けれども、これはチームメンバーからの信頼を失いかねない劇薬だし、賭けでもある。だから取り返しのつかない失敗ではなく、すぐに取り返せる小さな失敗を対象とすることが多い。あと正直に言えば、自己満足でやっちゃう時もごく稀にある、人間だもの。