アジャイルコーチの備忘録

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【イベントレポート】「離れて、共に 市場経済を超えたニーズへの対応」

はじめに

2020年7月25日に開催された、ミキ・カシュタンによる、特別オンラインWS「離れて、共に 市場経済を超えたニーズへの対応」のイベントレポートです。

スピーカーはミキ・カシュタン。
名前だけは知っていたけど、オーガナイザーの安納献さんによれば、日本にNVCを広めることになった源流の一人、そして世界で最も影響力のあるNVCトレーナーの一人とのこと。

今回はミキがコロナ禍で感じた市場経済主義の限界と、それを乗り越える方法を一緒に考えるという趣旨のワークショップでした。

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スピーチ

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質疑応答

Q. (地域コミュニティで交換する経済は)みんなが交換できるリソース(資源)を持っていることが前提となっているが、個人が細分化され、そのようなリソースを持っていないことが問題では?

全くもって同意します。
最初に政府を頼らなければならないのは、みんなが遠いところにある、大きな組織に頼っているから。
ただ、みんながどこにいようと、それを始めて欲しい。
たとえば、車から始められるかもしれない(→カーシェアリング)。
一つのストーリーをシェアさせて欲しい。
ソ連崩壊時、キューバへの贅沢品ではなく、日用必需品の輸入も途絶えた。
当時、急に自給自足にならないといけなかった。
今でもキューバの食料品の半分は、首都ハバナで生産されている。
環境が制限されると、私たちはよりクリエイティブになる。
今のこの時期は、創造性を引き出すのに良い時期。

Q. ミキさんの話の背景には、社会契約があるのでは? 日本は天皇制で2000年いったので、オルタナティブを探しづらい。ミキさんの社会契約という考え方が、簡単にしてるのでは?

私は日本の歴史にほとんど詳しくないので、想像で答えます。
天皇制の遥か前に、何かがあって、いのちから離れていった。
全ての文化の太古の知恵は、日本でも同じだと思う。
どこかの時点で、いのちを信頼するところから離れていった。
いのちから離れていたら、恐れに入った。
恐れに入ったら、どれだけ必要かどうかがわからなくなる。
恐れの中では、実際に必要な分量が分からなくなる。

自然の豊かさの代わりに、そこに生まれるのは2つの悪。
1. 製造された欠乏
2. 恐れ

恐れが起ると、争いが起こる
そこでは国家を作るのがとても魅力的になる

国家の機能は、暴力をコントロールすること。
1. これは正当化された暴力、正当化されてない暴力と区分ける
2. 国家は市場を生み出す。税金を生み出すためのお金を産むのに役に立つから

みなさんが乗り越えなきゃいけない権力への恐れは2層ある。
1. 天皇、もしくはてっぺんにいる強い男性への恐れ
2. グループ全体が持つ、同調圧力、グループが持っている権威

日本文化の強みは、全体を考えること、それは有利にも使える。

Q. 私たちは結局、プラスチック産業などは必要なのではないか?

エネルギー、石油、はそう長く持たない。
私たちはあまりにも利便性に慣れ親しんでいて、それ抜きでどう生活したら良いかのイマジネーションを失っている。
私たちは死と向き合う必要がある。
私たちを殺そうとするものをコントロールしようとするとそこには、より多くの死が集まります。
近代の文化は死を失敗と捉えている。
私は自然の命の一環として見ている。
この惑星の資源の範囲内で暮らし、消費を減らし、もう二度と合わない人の面倒を見る。

Q. ミキがこのワークショップで一番伝えたかったことは何か?

交換(exchange)は、利己主義に基づいている。
流れ(flow)は、寛大さに基づいている

私は、人間のみならず、全ての命を大切にするあり方がみたい。

人間のみならず。

(もう一問とても興味深い問いがあったのですが、ちょうど飲み物を取りにいってて聞けなかったので割愛)

感想

オーガナイザーの安納献さんがこのワークショップを開催した理由の一つとして、「ミキみたいな人がこの星にいて、こんなすごいことを言っている人がいるよと伝えたい」と言っていましたが、まず私が強く感じたのもミキの圧倒的な存在感でした。
ミキは、自分の人生すべてを目的のために捧げよう。と思い、目的に添わないことはやらない人で、このワークショップもミキに断られ続け、数年掛かりでようやく実現したとのこと。
まずはそんなミキ・カシュタンの存在と生き方に衝撃を受けました。
そして、衝撃を受けたのはミキ自身だけではなく話の内容にもです。
話は国家誕生前の数万年の規模に及び、資本主義など既存のイデオロギーに染まっている自分にはまだ消化に時間がかかると感じました。正直最初は「お花畑」ではないかと感じていましたが、質疑応答やミキのブログを読むと、これはお花畑ではなく、地に足がついた思想に支えられた社会変革運動だと思い直していきました。

thefearlessheart.org

それに......市場に委ねるのではなく、政府に頼るのでもなく、地域コミュニティで必要な分だけを与え合う社会。それは決して夢物語ではなく、すでに、社会のあちこちで芽吹き、このコロナ禍で加速しているようにも感じています。

今回、ミキは理想という種をみんなに植えたかったのだと思います。

もちろん理想を実現するのには多くの障害がありますが、種を植えられた私たちは、明日から少しだけ行動が変わるような気がしています。そしてその小さな行動の積み重ねが、大きく社会を変えていくのではないでしょうか。
私も今日からできることを探そうと思ったワークショップでした。

さいごに

今回はミキ・カシュタンの特別WS「離れて、共に 市場経済を超えたニーズへの対応」のイベントレポートを書きました。
イベントに参加できなかった方が少しでもイベントの雰囲気が感じる助けになれば嬉しく思います!
そして、想像より遥かに大変なイベントを企画、実現してくださった運営チームの安納 献、鈴木 重子、石川 咲子、石川 世太の皆様、ありがとうございました!