アジャイルコーチの備忘録

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本当は思ってもないことを感じてる"フリ"はもうやめよう - NVCダンスフロア体験会レポート(2019/09/26)

去る9/26(木)に「【東京・小石川9/26】共感的コミュニケーション練習会(富坂)第44回 NVCダンスフロアその2」というNVCダンスフロアのワークショップに参加してきたので印象に残ったことをレポートします。NVCとは何なのかはNVCとは を、自分がNVCにハマったきっかけは自分がNVC(非暴力コミュニケーション)にハマった理由(SINCE 2019/9/15) - アジャイルコーチの備忘録をそれぞれ参考になさってください。

まずはワークショップ概要です。NVCダンスフロアもワークショップ概要もいずれもNVC Japanのワークショップ周知ページからの引用です。
また講師は「NVCダンスフロアに人一倍の情熱を持っている」西東万里さん(NVCジャパンネットワーク)とおなじみ栗山のぞみさんのペアでした。

nvc-japan.net

NVCダンスフロアとは

NVCダンスフロアとは、CNVCトレーナーのブリジット・ベルグレイヴさんとジーナ・ローリーさんによって開発されたNVCの習得方法。言語寄り(つまり頭寄り)にとらえがちなNVCのプロセスを、ダンスフロアに見立てた床の上に「観察」「感情」「ニーズ」「リクエスト」等のカードを置き、それらの上をダンスを踊るように自由に移動し、位置を変えながら行います。

体を動かし、一つ一つのプロセスを丁寧に体感しながら進めることにより、NVCの理解が深まります。同時に、より自分にフィットする「感情」や「ニーズ」に気づきやすくなったり、だからこそより実際に”使える”感覚が身につく、とも言われています。

ワークショップ概要

NVCが初めての方、あるいはまだあまりなじみのない方には、OFNR(「観察」「感情」「ニーズ」「リクエスト」)とそれぞれ対になる従来の思考法「解釈・判断」「考え」「戦略」「強要」を自由に行き来しながら、本当のOFNRに繋がっていくという基本のダンスにお招きします。

それ以外にも、NVCの基本構造をたどる「13ステップダンス」、もしくは自分がいま内側にある葛藤に向き合うためのいくつかのダンスに挑戦してみることもできるでしょう。集まったみなさんの求めに応じて、多様な体験ができるようにしたいと思っています。

レポート

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NVCダンスフロア

参加者

参加者は、自分含め4人。中国人の主婦の方がいらっしゃったのですが、彼女いわく「中国ではNVCがブームで、ワークショップが盛んに行われているとのこと」...実際どんな感じなのかとても気になります。

なぜNVCダンスフロアなのか?

まずは西東さんによるNVCダンスフロアの説明です。さまざまなワークショップがある中で、なぜ西東さんが「ダンスフロア」を勧めるかを語っていました。西東さんが話していたのは、NVCを言葉だけで実践しようとすると心底にある本当の感情に気づくことなく、なんとなくパッと浮かんだ表面的な感情(西東さん言うところの「感情のフリ」)に流れがちでとてももったいない。一方、NVCダンスフロアは全身を使い、体の変化を確認しながら行うため、より心底にある感情に気づきやすくなるというメリットがあるとのことでした。「もしかしたらNVCを実践しても問題に対する答えは(実践前と)変わらないかもしれない。でも、体は変化してる。その「体の変化」が分かることが大事」と言っていたのが心に残っています。

なぜ最初のステップに「相手や自分をどう評価や批判しているか」があるのか?

NVCダンスフロアは「何が起きたのか」→「自分が何を感じているか」→「自分が何が必要か」→「自分は何をしたいか/相手に何をしてほしいか」の4ステップのカードの上を歩き回りながら行います。ここで不思議なのは(写真にある通り)最初のステップに「相手や自分をどう評価や非難しているか」が入っていること。これこそNVCが嫌う「暴力的なコミュニケーション」ではないのかと思ったあなたは鋭い!

……しかし、これもまた「感情のフリ」ではなく、心底にある真の感情に気づく工夫の一つ。事実ではなく解釈と分かっていてもまずは「母親は私を憎んでいる」とか「上司から私だけ冷たくされている」など、思いっきり今自分が抱いている「相手や自分をどう評価や非難しているか」を吐き出すことが、表面的ではない真の感情に気づくきっかけとして有効に機能するのです。

別のワークショップで栗林さんに「NVCをしていくと従来型の解釈や妄想に満ちたコミュニケーションが良くないと思われがちだが、そんなことはない」と言われ、最初は意味がよくわからなかったのですが、今は何となく分かるような気がしています。

内側と外側

さて、写真を良く見ると、ダンスフロアに仕切り線が引かれ、同じカードが手前と奥のそれぞれ置かれていることに気づかれたと思います。
手前を「内側」、奥を「外側」と呼び、内側は主観的な自分の内面世界が、外側は客観的な外の世界がそれぞれ現されています(外側に2レーンあるのは、相手と自分のもの)。面白いのは、NVC創始者のマーシャル・ローゼンバーグが常々「NVCを始めて2年は、内側だけにフォーカスすべき」と語っていたことです。(ちなみに西東さんは5年でも良いとのこと)西東さんに意図を確認した所、「自己共感は『内在化した他者共感』だから」と仰ってました。

今日は雨が降ってきそうね

NVCの説明が終わると、栗山さんによるNVCダンスフロアのデモンストレーションがありました。お題は、母親から出がけに言われた「今日は雨が降ってきそうね」の一言。「本当にこんなことがお題になるの?」と思いきや、栗山さんいわく感情的な軋轢がある人とはこういう些細な一言でも感情が揺さぶられるので、栗山さんが定番にしているネタとのこと。床上のカード上を歩き回るだけではなく、うつむいたり、中腰になったり文字通り全身で感情を表現する栗山さんの姿がとても印象的でした。
実演が終わると西東さんに栗山さんにコーチをされながら、参加者一人一人が自由気ままにNVCダンスフロアを実施しました。

マイクロソフトを変えたNVC

ワークショップの帰りがけに西東さんがビジネスとNVCの関係性について語っていただきました。
まず『ティール組織』にはNVCという単語(日本語の本では「非暴力コミュニケーション」)が3回出てくるそうです。※いずれティール組織とNVCの関係も整理したいと思います。

印象に残ったのは、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラがNVCをどうやって知ったかについての話。障害を抱えた息子を夫婦で育てる中、穏やかに変化していった妻を不思議に思ったナデラがたずねたところ、NVCを知ったとのことです。ナデラはまず家庭でNVCを実践し、徐々に仕事に適応していったそう。前CEOの スティーブ・バルマーも当時の社風も「敵を蹴落とせ」という野心と競争心あふれるものでしたが、ナデラのパーソナリティはまさに正反対。ナデラは社内に「敵がいない」ことで有名で、ナデラがCEOになると決まった際周囲がみな「彼なら良いのでは」と納得したエピソードをお話ししてくださいました。(その後のマイクロソフトの快進撃は言うまでもありません。エンジニアにとって特にevilのイメージが強かったマイクロソフトはすっかり変わりました)

さいごに

これを読んだみなさんが少しでもNVC、そしてNVCダンスフロアに興味を持っていただければとてもうれしいです!
さいごに一つ注意です、これを読んで早速NVCダンスフロアをやってみたくなった場合は、カードを自作するのではなく公式サイトからカードを買い、ガイドに行って実施していただくようお願いいたします。
色々とワークショップが行われているので、まずはそこに行ってみるのもアリだと思います。

nvc-japan.net